2007年1月17日水曜日

患者は弱者か

数年前の12月30日。私は院長代理当直を勤めていた。既に病院は年末年始の休診に入っていた。

午後4過ぎに私のポケットベルが鳴った。救急外来からの呼び出しであった。私は救急外来に電話をかけ、電話に出たナースに用件を尋ねた。

その日の午前8時頃に30歳代の男性患者が救急外来を受診した。けんかで頭を殴られて頭痛がするので入院させろといってきかない、救急外来で大声を出して他の患者の診察にも支障をきたしている、どうすればいいか、とそのナースは私の指示を仰いだ。当日当直の医師やナースに対して罵詈雑言を吐くこともやめないという。脳外科医、耳鼻科医、皮膚科医が既に何度も診察し入院の必要はないと判断しているという。 その患者は、その日の院長代理当直である私とも面識があると言い、それも盾にして入院させろと暴れている・・・。

確かに私の記憶にある患者であった。その患者は、まったく別の病気で私の外来を受診し、入院手術を受けることになっていた。しかし無断で予約をキャンセルした。手術前の検査にも来なかった。患者からはなんの連絡もなかった。こちらから電話したが連絡がとれなかった。

救急外来のナースの話すところでは、なんとその患者は何回かの私の診察料を払っていないということであった。この患者は年末年始のホテル代りに病院を利用しようとしているようだという。

私はこれ以上、患者が帰宅しないのであれば、警察に通報するようにと指示した。

救急外来のナースが警察を喚ぶことはなかった。しかし私から警察に連絡するようにという指示が出たことは患者に伝えたようだ。患者は、では帰る、と言い始めた。

ところが、歩いて帰宅すると思いきや、なんとその患者はそ自分で救急隊を喚んだのだ。救急車をタクシー代りに使おうというのだ。

救急隊はすぐに駆けつけた。しかしその患者の元気な姿を見て怒った。そして救急外来のナースではなく救急隊が警察に通報した。

警察官はすぐに来てくれた。

その患者はやっと帰宅する気になったらしい。しかし一人では帰れないといってきかない。自分の母親に電話をかけた。

その患者の母親が救急外来にその患者(息子)を連れに来た。母親は息子を連れて帰っていった。

しかしその日、朝8時から午後6時までの間に受けた診察料は一切支払わないままであった。その患者、曰く、「頭が痛いのは他人に殴られたためである。すなわち第三者行為によるけがである。したがって1円も払わない。」

第三者行為による怪我の診察を受けた場合には、患者がまず医療費の全額を支払わなければいけない。これは法律に定められている。

その親子はそれより前に受けた私の診察料も支払うことはなかった。

先日の読売新聞に公的病院に対する医療費の未払いが85億円という記事が掲載されていた。

果たして、患者はほんとうに弱者であるのか。昨今のマスコミの姿勢を私は厳しく問いたい。

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